冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「つまり、お前に期待しているのは料理だ。残業などで時間がない場合、他の家事は後回しにしていいが、料理だけは手を抜くな。手の込んだものばかり作れ、という意味ではないからな」


「わかりました。でも、他の家事もできるだけ頑張ります。特に掃除は……」


“掃除”と口にしたら、副社長は気まずそうに二回咳払いをしていた。
 気分を変えたいのか、コーヒーカップを口元に運ぶ。

 私も同じタイミングでコーヒーを一口飲んだ。
 いつもはミルクと砂糖を入れるけどこの家にはなかったので、そのまま飲むことにした。

 苦くて飲めないかと思ったけれど、コーヒー自体の甘みが口の中に広がって、意外といけた。
 少しだけ大人になった気分だ。


「まあ、全てお前に任せるよ。次に報酬だが、お礼ということなので無償で働いてもらう。期間は一年くらいかと思うのだが、柏木はどう思う?」
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