俺の罪、甘い罰。
少しして、河原は仕事部屋から出てくると、


「先生、とりあえず大丈夫みたい。」


そう言いながら、ソファに座る俺に近付いてきた。


確かに全体的に少しプカプカしてる感じだけど、まぁ、大丈夫だろう。



「貸してくれてどうもありがとう。」


俺の隣にちょこんと座って微笑んだ彼女に、


「どう致しまして。」


と、また彼女の頭を撫でた。



何も言わず、嬉しそうに微笑む彼女が愛しくて、


俺は頭を撫でる手を止めて、そのまま彼女にキスをした。



本当は、学校を出てからずっと我慢していたんだ。


何回も『キスしたい』と思った。


彼女に触れたくてたまらない。



“愛おしい”



この言葉以上に、今の俺の心の中を表現できる言葉はないだろう。


それは彼女の卒業式のキスから、ずっと消えなかった想い。


あのキスは、俺が河原の事を忘れないようにする為の、


彼女がかけた“魔法”だったのかもしれない。



いや…



“罰”だったのかもしれない。


沢山悩んだ挙句、結局、河原を掴まえなかった俺への、


甘くて、切ない罰―…




彼女は抵抗する事無く、瞳を閉じた。


自然と、俺のスーツのジャケットを掴んでいる。


まるですがりつくように、しっかりと握っていた。


俺はそんな彼女の手に、空いているもう片方の手を重ねた。
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