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「菜緒ちゃん、俺さ、地元の国立大医学部、推薦で受かったんだ」


そう話しかけてきたのは、同じ部活だった同学年の裕一郎くんだった。


「えっ、すごい!……いいなあ、もう進路決まっちゃったんだ」


「うん、それでさ、菜緒ちゃん」



――俺と付き合おう。将来は家の病院継ぐし。苦労させないしさ。安定した生活送れるよ、安心して。



え、という声すら出ないままに畳み掛けてきた。


最後には、沈黙は肯定? と小首を傾げて聞いてきたのでブンブンと首を横に振って否定した。そんなことしたって涼ちゃんのかわいさには敵わない。


「私、ずっと好きな人がいて、」


「医学部?」


「違うけど……」


「じゃ、いいじゃん」


なんだこの人、医学部至上主義か、と思ったけど言うまいとぐっと口を閉ざす。


「急に言われても困るのかな。二週間待つよ」


じゃあね、とひらひら手を振った彼の後ろ姿を呆然と見ているとその背中が急に振り返って言った。


「良いこと考えた。菜緒ちゃん、来週の土曜日デートしよ。駅前に朝十時ね。来なかったら強制的に彼女になってもらうから」
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