恋の後味はとびきり甘く★おまけSS★
ブルージュにて
「メルシー・ボク」

 私はチョコレートショップのオーナーショコラティエの手を握って、フランス語でお礼を言った。

「メルシー、メルシー」

 御年五十歳のオーナーショコラティエが、血色のいい顔でニコニコ笑って、大きな手で私の手を力強く握り返した。ちょっと手が痛い。彼は彼が作る繊細なチョコレートからは想像もつかないほど大柄な人だ。

 とはいえ、これで今回のブルージュでの買い付けは無事終了。

「オー・ルボワール」

 さようならの挨拶を交わして、涼介くんとともにチョコレートショップの外に出た。

 今日、七月二十一日はベルギーの独立記念日だ。それを祝うかのように、ブルージュの町は空気も晴れやかで清々しく、深く美しい青空に真っ白な雲がまぶしい。

 石畳の歩道を歩き出しながら、涼介くんが左手を差し出した。

「オーナー、すごく気さくな人だったね。あの人が最初に鈴音さんが交渉した人?」

 涼介くんに訊かれて、私は彼の手に自分の手を重ねながら答える。

「ううん、あの人は四代目なの。私がブルージュに泊まり込んで交渉を重ねたのは、あのルイさんのお父さん。ルイさんは気さくでとてもいい人よ」
「そっか」
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