Sの陥落、Mの発症
耳に届く水音が頭の中にまで侵入する。
「…っん、は…っ」
口腔を侵されるような深く激しい口づけに息をするのもままならない。
どんどん呼吸が乱れるのと同時に胸の奥からはしたない欲望がせり上がってくる。
もっとして欲しい。
触れて欲しい。
時折下着の中に忍び込む手が胸の膨らみを悪戯に弄ぶ。
「ぁ…っ」
気持ちよさに身を捩ると押さえ付けるようにまた一層口づけが激しくなった。
「んん…っ」
くらくらする頭の中で必死でそれを受け止めることしかできない。
どのくらいそうしていたか分からなくなったころ、不意に唇が離れていった。
「は…満足?」
前髪をかき上げ息の乱れる彼の姿を前に、どうしてか急に普段の姿が脳裏に甦り、そのギャップにたまらない気持ちになる。
「…まだ…」
「へぇ、どうして欲しいか言えよ」
気付きながらにやりと笑う彼の笑顔はいつもほどの余裕が無さそうで、それがまた背中を走る快感に繋がる。
「っ…言えな…い」
「言えないようなことして欲しいって?」
「…っ」
スカートの中に滑り込む手に意識がいってしまう。
恋人でもない男に両手を拘束されてこんな風に焦らされて、それでも触れてほしいと思うなんて。
「し、て…」
うわ言のように呟けばスカートの中に入り込んでいた手が抜け、覆い被さっていた影がなくなった。
そこで自分の両手が解放されたことに気付く。
半身を起こした彼は眼に宿る熱をそのままに私を見下ろしていた。
「自分で脱げよ」
「え…」
「服が邪魔だ」
そう言いつつ袖口のボタンを外し、そのままシャツを脱いでベッド脇に下ろす。
その何気ない仕種がたまらなく扇情的に見えた。
「俺は脱いだけど」
スーツの上からは予想もしなかった鍛え上げられた肉体に、はしたなく目を奪われる。
「何やらしい目で見てんの」
「…っ」
不敵な笑みと言葉に羞恥を煽られるがそれすらも快感に繋がっていく。
「もっとひどいお仕置きが望み?それとも無理やり引き裂いてほしいとか」
ストッキングの上を勢いよく滑り内腿へと伸びる手に慌てて声を投げる。
「ま、待って…っ脱ぐ…から…」
「…ちゃんと上手に誘えたらご褒美だ」
くらりとするような低く囁く声。
羞恥のリミッターなどとうに超えていた。
むしろその羞恥の先にあるどうしようもない気持ちよさに手を伸ばす自分がいた。
「見な…いで…」
何も言わずただ私の身体を見下ろす彼の目の前で、ほとんど脱げていたシャツを取り、キャミソールも脱ぎ捨てた。
恥ずかしさに震える指でスカートのホックに手をかけてずらしていく。
「はぁ…は…っん…」
何もされていないのに、見られているというだけで呼吸が乱れる。
上下に纏うのが心許ない下着だけになり、背中を浮かせてホックに手をかけた。自然と突き出すような形になった胸元に遠慮のない視線が突き刺さる。
どこを見られているのか分かる。まるでそこを舐められているかのようで、どうしようもなく欲情が煽られる。
なんとかホックを外すがなかなか取り去ることができず、胸を隠すように抜き取ってしまった。
無駄な抵抗だと分かりつつ脚を閉じて少しでも視線を避けようとしてしまう。
「何隠してんの」
「だ…って、もう、これ以上は…」
「俺の目を見て手を外せ」
「でき…ない…」
「奈々子」
「っ!!」
唐突に名前を呼ばれて反射的に目が合った。
一度目が合ったら逆らえない。
分かっていたのに。
「奈々子」
「……っ」
耳を侵すような支配的で甘美な声で。
ぎらつく欲望を隠しもしない目で名前を呼ぶなんて。
組み敷かれたベッドの上、胸の前で交差させた最後の防御を自らの意思でゆっくり解きほどいた。
震える腕を顔の横に。それは無抵抗の表明。
五年の間誰の目にも見せることのなかった白い素肌が今眺められている。
もはや下着の意味を成していない布まで眼下に晒され、羞恥のあまりに生理的な涙が目に浮かんだ。
もう、止められない。
「…めちゃくちゃに、して…」
何も考えられないように。
「っ…ご褒美だ」
獣に食べられる。
そう思った瞬間、首筋に噛み付かれた痛みと痺れるような快感がない交ぜになって私を襲った。
凄まじい熱量に焼き尽くされるかのように身体中すべてが暴かれる。
抑えられない嬌声は何度も唇に吸い込まれた。
繰り返し与えられる情動に背中に爪を立てて耐える。
意識の途切れるまで果てしない夜は続いた。
「…っん、は…っ」
口腔を侵されるような深く激しい口づけに息をするのもままならない。
どんどん呼吸が乱れるのと同時に胸の奥からはしたない欲望がせり上がってくる。
もっとして欲しい。
触れて欲しい。
時折下着の中に忍び込む手が胸の膨らみを悪戯に弄ぶ。
「ぁ…っ」
気持ちよさに身を捩ると押さえ付けるようにまた一層口づけが激しくなった。
「んん…っ」
くらくらする頭の中で必死でそれを受け止めることしかできない。
どのくらいそうしていたか分からなくなったころ、不意に唇が離れていった。
「は…満足?」
前髪をかき上げ息の乱れる彼の姿を前に、どうしてか急に普段の姿が脳裏に甦り、そのギャップにたまらない気持ちになる。
「…まだ…」
「へぇ、どうして欲しいか言えよ」
気付きながらにやりと笑う彼の笑顔はいつもほどの余裕が無さそうで、それがまた背中を走る快感に繋がる。
「っ…言えな…い」
「言えないようなことして欲しいって?」
「…っ」
スカートの中に滑り込む手に意識がいってしまう。
恋人でもない男に両手を拘束されてこんな風に焦らされて、それでも触れてほしいと思うなんて。
「し、て…」
うわ言のように呟けばスカートの中に入り込んでいた手が抜け、覆い被さっていた影がなくなった。
そこで自分の両手が解放されたことに気付く。
半身を起こした彼は眼に宿る熱をそのままに私を見下ろしていた。
「自分で脱げよ」
「え…」
「服が邪魔だ」
そう言いつつ袖口のボタンを外し、そのままシャツを脱いでベッド脇に下ろす。
その何気ない仕種がたまらなく扇情的に見えた。
「俺は脱いだけど」
スーツの上からは予想もしなかった鍛え上げられた肉体に、はしたなく目を奪われる。
「何やらしい目で見てんの」
「…っ」
不敵な笑みと言葉に羞恥を煽られるがそれすらも快感に繋がっていく。
「もっとひどいお仕置きが望み?それとも無理やり引き裂いてほしいとか」
ストッキングの上を勢いよく滑り内腿へと伸びる手に慌てて声を投げる。
「ま、待って…っ脱ぐ…から…」
「…ちゃんと上手に誘えたらご褒美だ」
くらりとするような低く囁く声。
羞恥のリミッターなどとうに超えていた。
むしろその羞恥の先にあるどうしようもない気持ちよさに手を伸ばす自分がいた。
「見な…いで…」
何も言わずただ私の身体を見下ろす彼の目の前で、ほとんど脱げていたシャツを取り、キャミソールも脱ぎ捨てた。
恥ずかしさに震える指でスカートのホックに手をかけてずらしていく。
「はぁ…は…っん…」
何もされていないのに、見られているというだけで呼吸が乱れる。
上下に纏うのが心許ない下着だけになり、背中を浮かせてホックに手をかけた。自然と突き出すような形になった胸元に遠慮のない視線が突き刺さる。
どこを見られているのか分かる。まるでそこを舐められているかのようで、どうしようもなく欲情が煽られる。
なんとかホックを外すがなかなか取り去ることができず、胸を隠すように抜き取ってしまった。
無駄な抵抗だと分かりつつ脚を閉じて少しでも視線を避けようとしてしまう。
「何隠してんの」
「だ…って、もう、これ以上は…」
「俺の目を見て手を外せ」
「でき…ない…」
「奈々子」
「っ!!」
唐突に名前を呼ばれて反射的に目が合った。
一度目が合ったら逆らえない。
分かっていたのに。
「奈々子」
「……っ」
耳を侵すような支配的で甘美な声で。
ぎらつく欲望を隠しもしない目で名前を呼ぶなんて。
組み敷かれたベッドの上、胸の前で交差させた最後の防御を自らの意思でゆっくり解きほどいた。
震える腕を顔の横に。それは無抵抗の表明。
五年の間誰の目にも見せることのなかった白い素肌が今眺められている。
もはや下着の意味を成していない布まで眼下に晒され、羞恥のあまりに生理的な涙が目に浮かんだ。
もう、止められない。
「…めちゃくちゃに、して…」
何も考えられないように。
「っ…ご褒美だ」
獣に食べられる。
そう思った瞬間、首筋に噛み付かれた痛みと痺れるような快感がない交ぜになって私を襲った。
凄まじい熱量に焼き尽くされるかのように身体中すべてが暴かれる。
抑えられない嬌声は何度も唇に吸い込まれた。
繰り返し与えられる情動に背中に爪を立てて耐える。
意識の途切れるまで果てしない夜は続いた。