Sの陥落、Mの発症
長く深い口づけに頭がぼうっとしてくる。
ただ口づけているだけなのに時折身体に触れられるだけでびくりと大袈裟な反応をするくらい感度を上げられていた。

「は、キスだけでよくこんなことになるな」
「はぁん…っ」

唇が離れたかと思うと胸の一番敏感な部分をきゅっと摘ままれ、身体に電気が走ったかと思うほどの快感が襲った。

「や、ぁ…っ」
「何が嫌?」
「あ…っ」

閉じた脚の間を強引に割った手がスカートの中に忍び込む。長い指が奥を探るように触れれば熱く疼くそこは突き抜けるような刺激にびくんと反応して声が漏れる。

「あぁ…っ」
「これ、ソファまで濡れてるけど」
「や、言わないで…っ」
「直接触ってるわけでもないのに」
「…っ」

羞恥を煽る言葉に堪らず俯いて目をぎゅっと閉じた。

「わ、私だって…前はこんなんじゃ…ッ」
「…誰と比べて?」

顎に手がかかり無理やり上向かせられると眉間に深く皺を刻んだ佐野くんの顔が間近に迫った。その瞳には怒りが見てとれる。

「ご、ごめんなさ…」
「随分余裕ですね」
「ち、ちが…っ」

佐野くんはすっと立ち上がってソファから離れると後ろの引き戸をガラッと引いた。
何かと思うとそこは寝室で一人で寝るには大きすぎるベッドがあった。

「こっちに来る?あ、この部屋に入るなら着てるもの全部脱いで下さいね」
「そんな…っ」
「またお預けされたいならそのままでいれば」

そう言って彼は冷たい目で自分のネクタイに手をかけてほどき、白いシャツを脱ぎ始めた。

熱くスイッチの入れられた身体は甘く疼いたままだ。
ここ最近何度も同じように中途半端に弄ばれては放置されていた。
目の前で露になっていく佐野くんの素肌に、ベッドの中の力強い腕を思い出す。

もう、我慢の限界だった。

ソファに座ったまま震える手でジャケットからシャツまでボタンを下ろしていく。

「下着だけになったらこっちに来いよ」

楽しむような声が後ろからかかる。
インナーのキャミソールもストッキングまで床に脱ぎ捨てた。

立ち上がり、上下下着だけの格好でソファの裏に回り込む。見られるのを少しでも避けるように手で隠しながら引き戸の前まで進み出た。

恥ずかしい。

上半身裸の格好でベッドの端に腰かけたまま、口元に笑みを浮かべた表情で佐野くんにじっと見られているのが分かる。
素肌に舐めるような視線が焼けつくようで堪らない。

「下着も外して」
「っ…」
「早く」

冷徹な声は拒むことを許さない。
絶対的な命令と同義の言葉。
それに従うことは恥ずかしいはずなのに気持ちと身体が昂っていく。

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