四つ葉のクローバーを贈られました
騒ぎの原因が分かって、開いた自動ドアを通って中に入ろうとした時、今度は誰かの悲鳴が聞こえてきた。
先程と同じ方角、あの和服青年と外国人観光客達の姿があった方からだ。
《誰か彼を助けて!》
女の人の英語での悲鳴がロビーに響き渡った。
助けてって……急病人!?
職業柄かすぐに身体が反応し、人混みへ駆け寄った。
「すいません!私、医者です!急病人ですか?」
「あぁ、良かった!この方です!」
ついさっきまで空港の案内カウンターに座っていた女性が指す方を見ると、蹲(うずくま)っていたのはあの和服を着た青年だった。
顔色は青白く、呼吸をするたびにヒューヒューと息を鳴らしている。
「すぐに救急車を」
「はい!」
「……荷物、触りますよ?喘息患者ならどこかしらに……あった!」
青年が持っていた巾着袋の中に財布、携帯と一緒に入っていた小さな細長い容器。
正直、これがないとどうしようかと思うところだったけど、あって良かった。
「吸入薬です。いつも吸ってると思いますが、吸えますか?」
「……」
青年は目を瞑ったままコクコクと頷いた。
少しでも吸いやすいように青年の身体を寄りかからせ、吸入薬のボンベを振る。
そのまま青年の口元に持っていき、ボンベの底を押した。
シュッと音がして、クスリが噴射されたことが分かる。
それから一分後、もう一回ボンベの底を押し、青年の様子を窺(うか)がった。