悪魔の証明



やっと、くだらない集会が終わった。やはり、この者たちには超法規的な裁きが必要だ。私は裁きを下さなければならない。

亀有強姦未遂事件ーー私が初めて調書を取った事件だ。

身体の振るえ、怯えた眼差し、青紫になった唇、私は一目見て、彼女は性的虐待を受けたと直感した。たしかに、日付は間違えていたが、強姦などという極悪非道の事件に巻き込まれたのだから、記憶が錯乱していても仕方がない。事実彼に五日前のアリバイはなかった。当初事件が起こったとされた当日のアリバイはあったけれど。

無職、数々の補導歴、歩行者への暴行。付近の住民の被告に対する苦情が多かったという事実。後日正確な犯行日が判明してからではあるが、本当は三日前だったと少年が言っていたという住民の証言があったと近隣警察官から聞いた。これで言い逃れしようなんていうのが甘すぎる。

事件発生と当時されていた当日、彼女は援助交際をしていたとネットでは多数書き込まれている。だけど、事実はふたりで食事をしていただけだ。19歳の少年の証言でそれは立証されている。たとえ、援助交際だったとしても、私は仕方がないと思う。女は弱いのだ。誰かに身を委ねたくなる気持ちは、女である私にはよくわかる。誰かと話したい触れ合いたい、あんなことがあったんだから当然の心理だといえよう。


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