真実の愛に気づいたとき。
「…いや?今日は違う」


そう答える松村さんの横顔は、寂しさを含ませながらも艶やかだった。


「違うって?」


「別に、お前には関係ない」


こんな素敵な場所を教えてくれて、少しは距離が縮まったかと思えば、こうしてまた突き放す。松村さんのことがよくわからない。


でも、それでも彼を求めてしまっている自分がいる。もっと知りたいという欲は止まらない。


「私は人の心は読めません。だから、口に出してもらうしかないんです」


「関係ないっつったろ?これ以上首を突っ込んでくるな」


一切こちらの方は見ようとしない松村さんに小さなイライラが募る。言い方ってものがあるんじゃない?


もちろん、人には知られたくないことの一つや二つはあるだろうけれど、そんな言い方…


だけど、何かを言っても刺激を与えてしまうだけのような気がして、それ以上は口を挟まなかった。


しばらく流れる無言の時間。気まずいとかは思わなかった。それは、風が木を撫でるようなササーッという自然の音がこの空間に流れ、"無言"ではあるが"無音"ではなかったから。


その時間にしばらく浸り、私はゆっくりと口を開いた。


「…今日、嫌なことがありました。ゼミのグループワークで同じになったグループの女の態度が、まるで自分が勝ち組とでもいっているような感じだったんです。外見を派手にして態度を大きくしていれば、偉くなれるんですかね」


「…知るかよ」


「松村さんも派手な見た目で得したことあるんですか?」


髪色は黒なものの、派手な部類に入るはず。しかもキャバクラのボーイときたものだ。


「色々言うけど、お前だってどちらかというと派手なんじゃないか?」


私の問いかけに応えることなくそんなことを口にした。


私が派手?いや、ないでしょ。派手だったら周りにこんなに舐められた態度をとられるわけがない。

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