真実の愛に気づいたとき。

「実はね、明日もその人と会うの」


「お姉さんの元カレと?そんなに会って何してるの?」


「ただの近況報告みたいな感じ」


もし自分に姉妹がいたとして、その元カレと会うのってかなり気が引ける。どういう付き合い方をしていたかにもよるが、さすがに二人きりで会うことは私には想像できない。


「あ、もしよかったらひかりも来る?」


思いもよらない提案に口があんぐりと大きく開いた。姉の元カレと姉の妹と妹の友達…なんとも異様な光景だろう。


「いやいや、いいよ私は」


「大丈夫だよ!いい友達になれるかもしれないよ?」


強引な誘いを断りきれず、結局私も同行することになった。



***


待ち合わせ場所は大学近くのレストラン。未央によると、お姉さんの元カレと会うときはいつもここなのだそう。


お互い別学部の講義を終え、スクールバスの停留所で待ち合わせる。


「ひかりお待たせ〜!」


「まだバスの列短くてよかったね」


バスに揺られること5分、駅近くに到着した。目の前に目的のレストランが建っている。未央は携帯を確認して『あと15分で着くみたい』と、その元カレと連絡を取っているようだった。


他愛ない会話を続けていると、未央は前方から歩いて来る人物に手を挙げた。


「あ!こっちこっち!」


私も未央が向く方に顔を動かす。細身のシルエットがゆっくりとこちらにやって来るのが見えた。


「…え」


近づいて来る彼は、私のよく知る人物だった。


恐らく彼も私に気づいたことだろう。わかりやすく目を見開き、歩むスピードを緩める。


この状況を把握していないのは、未央だけ。



「久しぶりだね!慶さん」


未央のお姉さんの元カレって…


「あぁ、久しぶり」


松村さんなの…?

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