真実の愛に気づいたとき。
「じゃあ、お店入りましょうか!」


未央の陽気な声。先を歩く彼女の後ろに私と松村さんが続く。


このまま何も気づかぬふりをするのは後に息苦しさを伴うことになるだろうと思った私は松村さんの背中に声を掛けた。


「あ、あの、松村さん」


その声に松村さんだけではなく、未央も足を止めて振り返る。


「え…ひかり、慶さんと知り合いなの?」


「うん…」


何かを言いたげな私の様子に気づいたのか、未央は『あっ』と思い出したように言葉を続けた。


「もしかして、相談に乗ってもらっていた相手って…」


未央に松村さんのことを話していた、その事実が意外だったのか、松村さんの視線が痛いくらいに突き刺さる。


「まさか、未央ちゃんの最近できた友達ってのが、君だったなんてな」


微かに柔らかさを含んだ松村さんの笑み。今まで彼の優しさには触れてきたけれど、冷たく突き放されることの方が多かった気がしたから、こんな風に笑うんだと不思議に思った。


「はいはい質問!二人はどこで出会ったんですか!?」


未央の変わらぬ陽気な声に言葉が詰まる。"ネオン街に繋がる十字路"なんて言えるはずがない。


そもそも私と松村さんの関係性ってかなり曖昧なもので。周りに説明できるあれではない。


レストランの一歩手前。入店する人たちの邪魔になってしまう位置に立っている私たち。


すると突然松村さんが口を開いた。



「未央ちゃんごめん、今日はナシにしてもらっていい?また後日改めてってことで」


その言葉に未央よりも大きく反応したのは私だった。もしかして、私がいるのが嫌なのかな。


後ろ向きな思考がぐるぐる頭の中を駆け回る。やっぱり私、嫌われちゃった…?



落ち込む私の手がギュッと誰かに掴まれた。その主を見上げると、辛そうな表情を浮かべる松村さんと目が合う。


「今日はこいつと話したいことがあるから」


未央は何かを考え、そしてニヤリと笑みを浮かべる。


「あー、何となく察しました。頑張って下さいね」


「え、が、頑張る…?」


訳がわからないでいる私をよそに、松村さんは手を引きながら歩いて行く。連れてこられたのはパーキングエリア。


半強制的に助手席に突っ込まれ、車は動き出した。無音の車内に気まずさを感じながらも、移り変わる窓の外の景色を眺めていた。


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