欲望の飴と飴売り少女
「ごめんね、準備終わってなくて」
あたしは、川野くんに謝った。あたしの家から山下の家は10分くらい歩き着いたみたいだ。
「山下さんってここら辺に住んでるんだぁ」
「どうしたの?木原さん。」
山下がとぼけた声であたしに聞いた。
「あたし、むかしこの辺に住んでたから…」
この辺にしばらく来ていなかったので少し懐かしく思えた。あたしは昔住んでいたけして、綺麗とはいえないアパートを指差した。
「へぇー、俺は木原さんが指差してたアパートに住んでて、つぼみがあの家に住んでるんだ」
山下の家の方を向く。とても広そうで豪華な一軒家が見える。
「でかぁ…」
つい口に出してしまうくらいの大きさだ。あたしが住んでいた時はなかったはずだ。豪華なお庭に門がある和柄な家…。
「ねぇ、川野くん、山下さん家って金持ち?」
川野くんにこそっと聞いた。
「まぁ、金持ちかなぁ」
川野くんはなぜか曖昧に答える。大きい門をこえ、大きい家に入ると、着物を着た綺麗な女の人が、山下の方を向かってお辞儀をした。
「お帰りなさいませ。つぼみお嬢さん。」
「ただいま! 友達来てる?」