Elevator Girl

1月13日

「チーフ、話って何ですか?」

二人で居酒屋で飲もう、と誘ってきたのにはきっと訳があるはずだ。

「津田、...ここをやめて、新しい店開かないか。
日本初上陸のカフェなんだけど、...そこのチーフになるのはどうかな、と思って。」

言いにくそうにチーフが言った。

頭の中が真っ白になった。



「......その、...リストラ、ですよね?」

「いや、そういうわけじゃなくて、...
チーフの枠があいていて、君を推薦したら、そしたらそのまま許可がおりて...。
勝手なことをしたのは悪かったと思ってる。

でも...チーフになるのは、ずっと津田の夢だと思ってたから...」


「どこ、ですか?」

「......2Fの」

瞬間頭がカッとなって、水の入ったコップをつかむ。


「ふざけないで!53Fから2F?
私を馬鹿にしないでよっ!」


勢いあまって、水をかけた。
酒の入った怒り、、というより、完全な拒絶反応。

「ただ、私といるのが気まずいからなんでしょ!」

「そうじゃないよ、そうじゃない。
津田の作るデザートは世界一うまいって思う。
それをもっと多くの人に食べてもらいたいって思ったから」



「...奥さんの手料理より?」


黙ったチーフを見つめるのは、胸が痛い。




「チーフに...桜庭についていきたかった。

私、足手まといですか?53Fでビュッフェオープンした時から...わたしはずっと必死だった!
桜庭に、ついていこうって...、ねえ、なんで!?」


視界が涙でかすむ。                                                                                                              
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