Elevator Girl
調理師学校の頃から、桜庭康平とはずっと仲がよかった。
同じ店で働こう、
って言ってくれたこと、いろんな意味で期待した。

だけど2年前、桜庭は結婚した。
結婚して53Fのチーフになった。

奥さんは私の全く知らない人で、料理とは何の縁もない人だった。

もう、15年の仲だっていうのに、私の片思いには気付かないフリばっか...

でもね、それでもよかった。ただ、一緒に働けることだけ、
桜庭に、...チーフに、シェフの一人として頼りにされることだけ、
支えにして生きてきたから。



「…いつものお前らしくないよ」

「もういい、帰って。お金は私がもつから」

「いや、でも」

「奥さんが待ってるでしょ。私はいいから...帰って」


離れていく背中を見てると、
こらえていた涙が、流れた。



2F!?
バカじゃない。


ぼろぼろのプライドしか、残っていなかった。                                                                                                  
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