Elevator Girl
        ***

独り飲んでいると、知らない男が二つ横の席に座った。

その男は、私の顔をじっと見て首を傾げる。
しばらくして、

「……53Fの津田さん?」

「…そうですけど」

頷くと、子犬のような無邪気な笑みを浮かべた。

「僕、結構常連で。
フォンダンショコラが大好きなんです!

それで、桜庭さんに津田さんって人が作ってること聞いて、顔覚えちゃいました」

「そう、ですか」


人懐っこい人だな、と思った。
それこそ、犬だったらしっぽをふっている様子が目にうかぶくらい。

「職業柄もあって、甘いものが無性に食べたくなっちゃうんです」


にこにこ笑うのを見てると、何だか心地いい。

可愛いな、
とガラでもないことを思ったのが最後で

そこからは詳しい記憶がない。                                                                                                        
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