Elevator Girl
ゆれるじぶんが、……いやだ。



抱きしめられた体が、力づくで引き戻された。

相模くんの真剣な横顔にはっとする。


「桜庭さん、離して下さい。

…………離せよ」


窮屈な腕の中から解放された私は、今度は相模くんに痛いほど左腕を捕まれる。

そのまま引っ張られて、チーフの背中が遠くなる。
遠くなってしまう。





屋上でようやく手を離した相模くんは、怒っていた。

「もし、僕が止めなかったら、あの人と飲みに行くんですか」


「……相模くんには関係ない。それに、そんなにダメなこと?」

「薫さん、何もわかってない!あの人はただ、

……自分の都合のいいように薫さんを、」


「黙ってっ!!」




…これ以上、何も言わないで。

なにが分かるの、

なにを知ってるの。


こんなみじめな気持ち、

わかったつもりにならないで。                                                                                                                            
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