Elevator Girl
         ***

帰り道エレベーターの前で、桜庭さんと一緒になった。


……タイミング、悪い。

気まずい沈黙に耐えられなくなった時、先に桜庭さんが口を開いた。


「相模さん、…あいつと知り合いだったんですね。驚きました」

「………ひとつ、聞いていいですか。
どうして、薫さんをクビにしたんですか?」


「それは、…俺と津田の問題なので」

「もう、薫さんに、近づかないで下さい。

…自分の都合で、薫さんを傷つけないで下さい」


「だから、君が入ってくる問題じゃないんだよ!」




桜庭さんが声を荒げたとき、エレベーターが到着した。


「薫さんをこれ以上困らせたら、僕も黙ってませんよ」

桜庭さんは、無言でエレベーターに乗る。




再び閉まったドアの前で、余計なことを言った、と後悔する。

でも本心だから、仕方がない。



薫さんの傷ついた横顔は、もう見たくない。



それは、2年前からずっと変わらない気持ちだった。                                                                                              
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