Elevator Girl
「明日のオープン、緊張する?」

「私、強い女なの。こういうのは楽しんだ者勝ち!」


薫さんの笑顔が、どこか強がってるように見えた。

「明日、僕が一番初めに行きますから」

「そう」

「…僕より桜庭さんがいいって思ってる?」

「い、いや、思ってはいないけど……」

突然、薫さんの笑顔がくしゃりと歪んだ。


「……不安なの。一番上ってだけで、こんなに押し潰されそうになること、初めて知った。

もし、…明日誰も来なくても、相模くんだけは来てくれるよね?」


手を伸ばすと、弱々しく腕におさまった薫さんが、不謹慎にもとても可愛く見えた。

「…大丈夫ですよ」


この人の弱っている姿に、僕はどうも弱いらしい。

キスをしようとしたのを途中でやめた。


薫さんに、好きになってもらいたい。
気持ちが通じたキスをしたい。


そんなわがままな気持ちが、今更のように溢れてくる。


薫さんは目を開けて、僕の顔を見て口を尖らせる。

バカね。


ごめん、
と返事も出来ずにうつむいた。



明日、また迎えにくるから。

薫さんがもう二度と桜庭さんに振り回されないように、僕が守るから。

だから、待っていてほしい。



言いたい言葉はたくさんありすぎて、頭の中を駆け巡るだけで、口から出ない。


何も言わず強く抱き締めるだけで、全部伝わればいいのに、と思った。                                                                                                                
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