Elevator Girl

2月14日

         ***

オープンの日がやって来た。
日本初上陸のコーヒーショップっていうのもあって、取材のカメラマンが入った。

店は開店からずっと満席で、特にカップルが目立つ。

今日がバレンタインデーなのもあるけど、内装やメニューをカップル向けにしたのが、良かったのだろう。


厨房から見えるお客さんの反応が、いちいち私の胸をぎゅっと熱くした。

よかった、
不安と緊張でどうにかなりそうだったけど、……全部報われてしまうな。

それも、あの日弱音を受け止めてくれた、相模くんのおかげ。


と、いいながら胸に小さな棘が刺さる。


相模くんは、来なかった。

一番に来てくれるのを、開店前から外に出て待っていた。

なのに、閉店時間をすぎても、まだ一度も顔をださない。



「………うそつき」


きっと何か急用が出来たのだ。

相模くんはお医者さんだし、店に来るのも始めから無茶な話だったのかも。

私は泣き言を言う前に、十分大人だ。

だから、分かってる、分かってるのに、



…今日だけは、よく頑張ったって、抱きしめて欲しかった。                                                                                           
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