Elevator Girl
シャッターを下ろし、一人でモップをかける。

その時、焦ったように走る足音がした。


…やっと、来た。おそいよ。

私は、すねる準備をして、後ろをふりかえる。



「津田」


…違った。
一瞬固まった顔を、何とか取り繕う。



「………なんだ、桜庭、じゃん」

「オープン、おめでとう。なかなか、来れなくて悪かった。
これ、店に飾ってくれ」



スーツ姿のチーフが、100本近いバラの花束を差し出した。

「…ありがと。プロポーズかと思った!…あ、冗談だよ?」


思わず、といった様子で桜庭が笑った。


この前から気まずかったから、少し安心。

やっぱり私だちは、仲のいい同期、だよね桜庭。




「津田、俺今別居してるんだ」

「…え」


「やっぱり無理なのかな。ほら、俺面倒だろ、性格が。

きついし、仕事が優先だし、

…参っちゃって、この前はどうかしてたんだ、悪かった」



突然の話に戸惑った。

桜庭は、らしくない乾いた笑みを浮かべている。                                                                                                
< 41 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop