Elevator Girl
         ***

「デザートは何になさいますか?」

「フォンダンショコラと、彼女にはトリュフを」


注文をする久堂さんを見ていると、改めて変な気分だ。


何で、こんなとこで、二人でいるんだろ…?


いつもはエレベーターの中でしか会話はしない。

それも、お昼ご飯のおすすめばかり。

毎日会っている久堂さんが、まるで知らない人のように見える。


「……そんなに見つめられると、照れるね」

「えっ、あ、ごめんなさい」

「悪い気分じゃないけど。…何故誘ったかが気になる?」


図星でうつむくと、久堂さんは軽く笑った。

「この店はカップルが多いから、入りづらくて」

「そう、…ですか」

「あるいは、気になる子と食事がしたかったから」


「…え」

「どちらでも、お好きな方の解釈を」


私はまた、まじまじと久堂さんの顔を見る。


冗談?
にしては、笑えない。

さっきの恥ずかしそうな、態度はどこへいったの。

また、飄々とした掴めない男になってしまった。                                                                                                 
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