Elevator Girl
久堂さんの顔に少し寂しげな影がよぎって、
私はあわててうなずいた。

「わ、私でよければ」


何故だろう。

久堂さんがみせる、知らない姿に、いちいち胸が高鳴ったり、締め付けられたり、どうもおかしい。



「君がいいんだ」




真摯な瞳と笑顔に、瞬間からだが貫かれた気がした。

後から、じわじわと熱が顔にのぼっていく。


ダメだ、今真っ赤に違いない。




いつも会話は長くて数分。

毎日会っていたはずなのに、全く知らない顔がある人。

年齢も、もしかしたら職業まで謎な人。

初めて会ったのがいつか、分からない人。



そんな秘密だらけの男に、見事に落とされてしまったのかもしれない。                                                                                                                  
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