いつまでも弟だと思うなよ。
◆ 遠ざけたくせに
* 千景 side **
「あ、例の先輩だ」
「え、どこどこ?あ、本当だ!」
「やっぱ3年って、やる事大人だよな〜」
朝から、そんな耳障りな会話が流れ込んでくる。
「おっはよー、千景!」
「…あ?」
「うわっ、機嫌悪…」
勇太が俺の席までやってきたけど、正直相手はしていられないのが現状だった。
「お前なー、そんな気にすんなって。姉貴から聞いたけど誤解だって言ってたぞ?」
「……」
「無視かよ」
ま、いいけど。なんて言って勇太は自分の席へと戻っていく。
それを何となく見届けてから、窓側の席の俺は外を眺めた。
校門から玄関へ向かう、真田とかいう男が見える。
朝早く登校している可奈は、当然そいつの横にはいない。
そのことに安堵しながらも、自分の横にもいないという事実に何も言えなかった。