いつまでも弟だと思うなよ。
「よりによってなんで今日に…」
「え、何?」
「あ、こっちの話です」
キッチンで煮込み作業をしているお母さんには、どうやら私の呟きは届かなかったらしい。
─────ピンポーン
そんな折、家のチャイムが鳴った。
この時間の来客者なんて1人しかいない。
「はーい」
ガチャ、とドアを開けると、そこにはやっぱりチカの姿が。
「はい、これ」
「わっ、ありがとう!」
そこで渡された瓶の中身は、赤くキラキラと輝いている。
とっても綺麗で美味しそうなそれだけど、私はもう嫌な予感しかしなかった。
「…ぷ…っ、あははッ。え、何?今日可奈ん家カレーなの?」
「笑うなーっ!」
案の定、玄関まで香ってくるスパイシーな匂いに気付いて可笑しそうに笑うチカ。