いつまでも弟だと思うなよ。
「花火大会に高校生が浴衣着るなんて珍しくないって!千景くんから誘って来たんでしょ?だったらそれに応えなきゃ!」
「こ、応えなきゃって…」
何故か私よりもウキウキな美沙。
着付けも化粧も私がしてあげるから!なんて凄く押してくるものだから、私はそれに頷くしかなかった。
「はよー。なんの話?」
「あ、真田くん。おはよー」
「おはよ。今ね、可奈子に花火大会に着る浴衣進めてたところなの」
「…えっ?」
真田くんも登校して来て、早速美沙は今までの経緯を彼に話し始めてしまっている。
「宮野、誰かと花火行くの?…もしかして、あの弟クン?」
声のトーンが落ちている真田くんに、私は小さく頷くことしかできなかった。
「まじかー。俺も誘おうと思ってたのに」
「先越されちゃったわね」
「うわー。次は絶対負けねぇ」
そう言う真田くんと、そんな彼の肩をポンと叩く美沙を見ていると、なんだか申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。