いつまでも弟だと思うなよ。
「……ったく、全然意識してくれねーのな」
そう呟いたところで誰も返事はしてくれない。
この前、久々に可奈に自分から迫った。
中学の頃にもやった事はあったが、一足早く高校生になっていた可奈には俺の想いが全く通用せず完敗。
そしてこの前。
やっと同じ高校生として近付けたと思ったのに、今度は通用しかけてキッパリと線を引かれてしまった。
『チカ、手を離して』
あの強い態度の彼女に、俺が勝てた試しは一度だってない。
***
「おーっす、千景!あ、じゃなくて、"チカちゃん"?」
「……何お前、生き埋めにされたいの?」
「うっわ、今日は一段と機嫌悪いのな」
教室に入って来たところで、いつも連んでる佐倉勇太(サクラ ユウタ)がちょっかいをかけて来た。
特に話したこともないのに、中学から連んでる勇太には俺の気持ちが完全にバレているらしい。