いつまでも弟だと思うなよ。
「千景くん、びっくりするだろうね」
「そ、そうかな?」
美沙の口からもチカの名前が出てきて、突然のことに吃ってしまう。
そう。チカには、私が浴衣で行くことを知らせていない。
毎年お互い私服だったから、きっと今年も私服で行くとばかり思っているだろう。
「ふふっ、楽しみだなぁ」
そう言ったのは、私ではなく美沙の方で。
「なんか、美沙の方が楽しんでるよね」
「え?まぁね〜。今度会うとき話聞かせなさいよ?」
「いいけど、そんなに話すことない気がするなぁ」
そんな会話をして、美沙はニコニコ笑顔で帰っていった。
─────ピーンポーン
その入れ替わりのように家に鳴り響くチャイムの音。
「はーい」
小走りで玄関に行くと、私はドアを開けた。