いつまでも弟だと思うなよ。
「まだ負けたわけじゃないからな」
「え?」
周りの音に混じって、真田くんの言葉は聞こえなかった。
***
「可奈」
「あ、うん」
今日の作業が終わって、チカが私を呼ぶ。
けど、その声と表情が心なしか不機嫌な気がした。
「奥原くん、また明日ねー!」
「あぁ」
なのに、金城さんのその言葉には素っ気なくとも普通に接するチカ。
私の勘違いかなとか思ったけど、やはり勘違いではなかった。
「チカ」
「……」
「チカってばっ!」
帰り道で、いつもなら私の歩幅に合わせてくれるはずのチカがスタスタと行ってしまう。
名前を叫ぶと、やっとの事でその足は止まってくれた。