いつまでも弟だと思うなよ。
「何なの、さっきから。なんで可奈が怒ってんの」
「別に怒ってないし。怒ってるのチカの方じゃん」
「は?それは可奈がアイツの前でヘラヘラしてるからだろ」
「ヘラヘラなんかしてないってばっ!」
つい、大声を出してしまった。
ハッとして周りを見れば、道行く人たちがコソコソと話をしながら通り過ぎてゆく。
「〜…っ、もういい!」
恥ずかしくて、情けなくて。
「おい、可奈─────」
チカの声も無視して、私は家へと走って帰った。
────バタンッ
部屋に入って勢いよくドアを閉めると、そのままズルズルと床にしゃがみこむ。
「…何よ、チカのバカ」
私のその声は、誰にも拾われることなく静かな部屋の中で溶けていった。