いつまでも弟だと思うなよ。
◇ 渡さないから
「やっぱり、それってただの惚気だよね?」
「だからなんでそうなるの?」
文化祭前日。
昼休みにご飯を食べながら、美沙はもう何度目か分からないセリフを、今日は卵焼きを頬張りながら言い放つ。
あれ以来、チカとは口を聞いていない。
「大体さ、口聞いてないくせに登下校は一緒って意味分かんないんだけど」
「…そこは否定しないけど」
そのくせ、登下校は一緒にしている。
その点では自分でも意味が分からないけど、朝はチカが玄関の前で待ってるし、帰りは作業の後チカが待っているから。
お互い一言も喋らないくせに、機嫌も悪いくせに。
私が避ければ一緒の登下校もなくなるのにそれをしないのは、少なからず私がチカと居たいと思っているからなわけで。
「なんか、難しいよね」
「いやだから話し合えば済む話でしょ、それ」
美沙からの鋭いツッコミが入るけど、私はこれ以上どうすることもできなかった。