いつまでも弟だと思うなよ。
効率は悪かったけれど、こうして改めて見ると中々のクオリティだと思う。
教室に入れば、薄暗い中にたくさんの別れ道がある狭い道が広がってゆく。
作ったはずなのに、私はもう正しい道が分からない状態だ。
「はい、では。可奈子、いってらっしゃい」
「へ?」
トン、と背中を押されたのは迷路の中ではなく、教室の外。
「実行委員、行かなきゃでしょ?もう時間ないんだから、頑張っておいで」
そう言って美沙はニコリと笑った。
それは作業のことなのか、それともチカとのことなのか。
どちらにせよ、私は彼女に「ありがとう」を告げて、教室を後にした。
「ごめん!遅くなって!」
向かった先は校門前。
うちのクラスとは違って、アーチも看板も全てが完璧に飾られていたそこは、もう既に撤収作業に取り掛かかっていた。