いつまでも弟だと思うなよ。
「3年2組の脱出ゲーム、いかがですか〜!」
文化祭が始まれば、意外にもうちのクラスは大盛況だった。
「3分経つとお手元のタイマーが鳴ります。それまでに出口に辿り着いてくださいねっ」
初回店番の私は、笑顔を浮かべて来てくれるお客さんに説明し続ける。
もうチカのことなんて気にしてない。
…そう思ってる時点で気にしてるなんてことは、どうしても認めたくなかった。
「君、このクラスの子?迷路か〜!ねぇ、一緒に入ってくんない?」
何回か受けたそんな誘いも、段々断るのが面倒になってきた。
…どうせ、チカは助けに来てくれない。
少しだけ花火大会の日と被って思い出してしまう自分がたまらなく嫌だ。
「いいですよ」
「えっ、マジ?やりー!」
もう、ヤケだ。
私って最低。
こんなにもチカを好きになってたなんて思わなかった。