いつまでも弟だと思うなよ。
喜ぶお客さんを横目に、一緒に教室の扉をくぐる。
…その前に。
「ちょっと待った」
聞きなれた声が、私を止めた。
「悪いね、お兄さん。こいつ、俺の連れなんで」
「あ?」
「ほら、早く迷路入んなよ。…1人で」
ニコリと笑っているのに、恐怖を感じる。
「チッ、OKしたのその女のくせに」
そのお客さんは、そう私を睨みつけて帰って行った。
「…何してんの、宮野」
残されたそこで、真田くんは呆れ顔で私を見下ろす。
「あはは…」
「笑えてねーし」
少しだけ、真田くんに止めてもらって安心してる自分がいた。