いつまでも弟だと思うなよ。
「何、ドキッとでもした?」
「な、な…。そんなわけないでしょ!?」
ドン、と俺の胸を押して離れてしまう。
そんなことを言っておきながら動揺してる彼女が、たまらなく愛おしいと思った。
鈍いくせに、変なところは鋭いあの線引きももう使えない可奈。
…というか、使えなくなってることに気付いていないのかもしれない。
「ほら、可奈」
すっと目の前に手を差し出せば、不貞腐れた表情をしながらも素直に俺の手を握った。
「カフェ行きたいんだっけ?行こうか」
「ん」
素直なのか、素直じゃないのか。
想いが通じてから知る可奈の行動パターンに、俺も大分一喜一憂させられそうだ。
***
文化祭の最後には、花火が上がる。
俺と可奈は、例の西棟の屋上でそれを眺めてた。
「久しぶりに来たなー、ここ」
「1年の時にはよく来てたんだろ?」
「わ、よく知ってるね。私チカに話したっけ?」
覚えてないや、なんて笑う可奈。
俺は覚えてるよ。
可奈の言動、ひとつひとつ。
自分でも狂ってしまいそうなほど、ずっとお前を見て来たから。