いつまでも弟だと思うなよ。
「にしても、うちの班の女子、みんな手際いいよね」
「だよなー。みんな普段からやってるな、ありゃ」
火を付け終わり、女たちがカレーを煮込み始めたのをただ眺めてる時間。
その手際を見た河上と勇太が、何やら話し始めた。
「金城も口だけじゃなかったな、千景」
「…みたいだな」
さっき話しかけられた内容を聞いていたらしい勇太は、俺に話を振る。
確かに金城は、見た限り1番普段から料理をしてるのが分かる。
けど、料理が出来ようと出来まいと、俺にとっては別にどうでもよかった。
「そういえばさー。可奈子ちゃんって、炊事遠足の時どうしてたの?壊滅的に料理出来ないのに」
思い出したように唐突に疑問を投げかけてくる勇太。
誰?と聞いてくる河上に対して、勇太が「3年にいる千景の幼馴染」と説明すると何故か納得するそぶりを見せていた。
そんな2人を見ながら、可奈の炊事遠足の時の様子を想像する。
「どーせあいつは他の人に料理任せて傍観役だろ」
手伝おうとしても、問題を起こして班の人に何もしないでと言われてたんだろうな。
可奈は、俺が知ってる頃から壊滅的に料理が出来ない。
不器用なのか、見た目も味もてんでダメ。
おかげで俺の方が料理が上手くなったくらいだ。