いつまでも弟だと思うなよ。
2階の教室からでも聞こえる女の子たちの黄色い声。
中には、チカちゃんの名前を呼ぶ声まで聞こえる。
「何?どうなってるの?なんでチカちゃんあんなに囲まれてるの?え、どうして?」
軽いパニックに陥った私は疑問系の言葉しか出てこない。
それを宥めるかのように、美沙は私に私の知らないチカちゃんを教えてくれた。
どうやらチカちゃんは入学当初から圧倒的人気を誇っているらしい。
整ったルックスと、1年生でありながら大人の雰囲気を持つその姿から王子と呼ばれることも少なくないのだとか。
「分かった?千景くんのことを可愛い弟だなんて思ってるのは可奈子くらいなんだよ。他学年からだって狙ってる女子いるんだから」
「…は、初めて知りました…」
「幼馴染って怖いわね」
呆れたように苦笑する美沙を横目に、再び私は窓の外に目を向けてチカちゃんをモテぶりを再確認したのであった。