いつまでも弟だと思うなよ。
腕を拘束され、私の真上には真剣に見つめるチカがいる。
「ち、チカ…時間…っ」
「うるさい」
なんとか抵抗しようと試みても、あっさり却下されてしまった。
もう家を出ないといけない時間だというのに、まるでそんなことはどうでもいいかのような様子のチカ。
何度目かのこの状況に、流石の私も早くから危険信号が鳴っていた。
「可奈。あいつにされたことと、今。どっちがドキドキする?」
「…へっ?」
思ってもみなかった質問に間抜けな声が飛び出す。
「そ、そんなの…どっちも…」
咄嗟に言葉にしてしまった。
けど、真田くんとのあれも、今のチカの行動も、私にとっては心臓に悪いことに変わりはない。
「へぇ」
答えた私に対し、チカは意味深にそう呟いた。