いつまでも弟だと思うなよ。
当然のことながら、私とチカは一緒に登校しなかった。
私が準備を終えた頃には、とっくに向こうは出て行ってしまっていたから。
私は、彼を傷付けたのだろうか。
…あんな顔、初めて見た。
あんな、苦しそうな、悔しそうな顔。
チカは、私が嫌いになってしまっただろうか。
「…なんでこうなるのよ〜…」
はぁ、と机に項垂れた。
***
───キーンコーン…
結局、最後の6限目の授業までずっとそのことで頭が支配されていた。
放課後実行委員があることはまだチカに伝えていない。
朝伝える予定だったから。
だから、いつもならチカが迎えに来るはずなんだ。
なんだ、けど…。
「…帰ってるし」
窓から外を見れば、見間違えるはずのないチカの後ろ姿が校門をくぐるのが見えた。