いつまでも弟だと思うなよ。
前を見ていなかったせいか、何かに躓いた。
前のめりに倒れていく身体。
────グイッ
が、強い力によってそれは引き戻された。
「…あっぶねー…」
目の前には真田くんの胸板。
真田くんの腕が、私の背中に回っている。
「ご、ごめん…!」
今自分が真田くんに抱き締められている状況に気が付いて、思わず勢いで彼から離れた。
「ははッ、勢い良すぎ」
「ごめん…」
「いいって。宮野は危なっかしいなぁ」
ケラケラと可笑しそうに笑う真田くんに、なんだか恥ずかしくなってしまう。
「やっぱり送ってくよ」
「え、いいって!」
「ダーメ。また転ばれても困るし。…それに、もう少し宮野と一緒にいたい」
「…っ!」
そんなことを言われたら断れるはずもなく。
「お願いします…」
「おう」
結局、この日はお言葉に甘えて真田くんに送ってもらった。