さよならメランコリー

何行か空白を空けて『これはあくまでもついでなんだけど!』と主張せんばかりの文章と、普段絵文字なんて絶対につけないのに、『楽しんでる?』のあとにつけられたハートの目をしたキャラの絵文字。それがあんまりにもカナちゃんらしくなくて、それでいてカナちゃんらしくて。

憎らしいって思うのに、憎みきれない。カナちゃんもずるいね、ほんのちょっと可愛いなって思っちゃったでしょ。



なんて返信しようかな、なんて考えてるうちにいいことを思いついた。やっぱり私って、やなヤツなんだ。

ごめんね、カナちゃん。きっと最後の意地悪だから許してね。


リズミカルに文字を打って『送信』の文字を押すと、にやりと笑う。ふとドレッサーの鏡に映った私は悪い顔をしていたけれど、なんだか今までの歪なそれとは違って見えた。

よかった。やっと私、人間に戻れた気がする。


明日、カナちゃんには「あれ、私カナちゃんだけに返信してなかった?」と白々しく嘘を吐こうと心に決めて、勢いよくベッドにダイブする。すると、ふかふかのマットが私の体を押し返して、脳が心地よく揺れる。


なんだか現実味がない、変な感じ。

半分『やりきった』という満たされた気持ちと、半分『終わっちゃった』という空っぽになったような虚しさ。でも清々しくて、この穴の空いたような気持ちも全然嫌じゃないと思った。
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