さよならメランコリー

「うっぷ……」


このなんとも言い表せない感情に浸っていたかったのに、あんなに食べたあとに急に激しく動いたからか、胃から何かが押し上がってくるような気持ち悪さが私を襲った。

だけど仰向けになってごろんとしていればすぐに収まってほっとする。口のなかにほんの少しの苦みだけが残っている。


「チョコレートは当分いらない、かな」


恋をしていた時間は、私にとって長い憂鬱の時間だった。

楽しくてキラキラしたことなんかよりも苦しいことのほうが多くて、やめられるならばいつだってやめてしまいたかった。だけど、やめることなんて絶対にできなくて。毎日、何かと自分を比べては自己嫌悪に陥って。


だけど、どうしてだろう。きっといつかこの恋は、ぐちゃぐちゃに丸めて捨ててしまいたくなるようなものなんかじゃなくて、抱きしめて守ってあげたくなるような、そんなあたあたかいものになるような気がする。


こんな風に感じているなんて、私は解放されてしまったのかもしれない。苦くて惨めで、懸命にあがいた憂鬱の日々から。


これでしばらくはお別れ。次に出逢えるのはいつだろう。

数ヶ月後?……一年、二年。いやもっと先? それとも、思いがけず明日にでもばったり再会してしまうのかもしれない。


だけどとりあえず、私はまだ今のところお腹いっぱいだよと君に伝えておきたい。




さよなら、私の愛しき憂鬱よ。
いつかまた出逢える日まで。
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