さよならメランコリー
珍しすぎる彼からの電話に浮かれていた私は、ほんの少し勇気を振り絞って秘めた恋心をほのめかす。 だけど、彼はいつも通りおかしそうにけらけらと笑った。
『そうだよなあ。 見かけによらず、おまえは意地っ張りだもんなあ。もっとみんなに心開け〜』
「……違うもん」
『ん、なんて? 聞こえなかった』
「ううん、……なんでもない」
違うのに、全然そうじゃないのに。 意地っ張りなんかじゃなくて、ただ、こんな面倒な私を笑って受け止めてくれる人は彼しかいなくて。
悩みなんて口実にして、しょうもないことで電話しても「今日はどうした、泣き虫!」って笑ってくれる。バカみたいに泣いてた日だって、コウキくんと話していれば最後にはしょうもない話で笑っている。 いつだって私を、優しい気持ちにしてくれる。
そんなコウキくんがすきだから。だから、私は彼の前でしか泣かない。ただそれだけなのに。
どうしていつも、私が振り絞ったほんのちょっとの勇気に気づいてくれないの? それとも、気づいているからこそ、笑って全部なかったことにしちゃうんだろうか。
「あー、そういえばなんだけど」
「んー? なあに」
「やー、あのさ、もうすぐカナの誕生日じゃん……」
「……カナちゃん?」
「や、ごめん。やっぱいいわ! ありがとな」
どっちにしたって、彼が私の想いに気づかないからこそ今の関係が保てている。それは確かだ。