年上の彼。
「小春の就職祝いやってなかったな?」

おもむろに思い出したのか片手を頬づえして私を見ている。

「何が欲しい?」

「何でも、いいの?」

「そうだなぁ…… 俺のお財布と相談だな?」

ニヤッと笑いながら持っていた煙草を灰皿に押し当てた。

「大丈夫。お金なんてかからないよ」

「ん? なんだ?言ってみ?」

頭をこてんと傾け私の答えを待っている。




「……っス、がほしい……」

「ん?」

ベランダの壁ギリギリまで近づいてきて私の声に耳を傾けている。

「………キスが、ほしい」

言うつもりなんてなかったのにな。

もう会う事もなくなるかも、なんて頭によぎったからなのか。

思わず出てしまった。

びっくりする事もなくただただ私の顔を見ている裕ちゃん。

何か言ってよ。

独りよがりじゃない。

だんだんと冷静さを取り戻した私にはこの空気感が耐えらず裕ちゃんから目を逸らす。
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