葛城社長と運命の恋を始めます
明日の準備をしていたから、お昼が過ぎた事を忘れていた。


お腹も空いてないし、何だか眠い。


ベットが私を呼んでるよ。


そのまま寝てしまったらしい。


部屋に電話が鳴り響く。


慌てて出ると、夕食の準備が出来ましたと言われた。


あちゃ、又、やってしまった。


お父様とお母様は出かけていていないし。


お祖父様とお婆様は別棟で食事を取っていた。


花枝さんの怒った顔が目に浮かぶ。


このまま寝たふりをしようかな。


このお屋敷で暮らしたいだなんて、もっと考えるべきだった。


重い足取りでダイニングへ向かう。


朝陽さん、早く帰って来ないかなぁ。


「若奥様が座らないと、みんなが食べれないんです。」


すみませんと頭を下げた。


目の前に並んだ料理を見て、思わず声が出る。


私の苦手なものばかり。


ピーマは食べれないし、焼き魚も苦手。


好き嫌いはないと言ってしまったから、どんな事しても食べなきゃ。


これはピーマンではないんだと、自分に言い聞かせて食べた。


大丈夫、大丈夫だから。


気持ち悪い。


「お口に合いませんか?」


「いえ、大丈夫です。」


大丈夫なんかじゃありません。


朝陽さん、早く帰って来て!


花枝さんが睨んでるけど、ピーマンを必死に飲み込む事だけを考えていた。


「はな、大丈夫か。」


泣けて来るの必死に我慢。


「花枝さん、はながピーマが苦手な事は話してありましたよね。はなを虐めるのは止めていただきたい。」


「子供じゃあるまいし、朝陽様が甘いから付け上がるんですよ。」


食べられない私が悪いんですから、怒らないで下さい。


そう言いたくても気持ち悪くて、そのままトイレへ駆け込んだ。


情けない。


こんな事で泣くなんて。


トイレへ朝陽さんが入ってきて、背中を差すってくれた。


「はなを一人にしてごめんな。」


花枝さんとはどうしたら仲良くなれるのだろうか。


嫌われたままじゃ駄目だ。


でも、ダイニングに戻る勇気がなくて、朝陽さんにそのまま部屋に連れて行かれた。


「はなの好きなケーキ買ってきたんだ。一緒に食べよう。」


嬉し涙なのか、悲しくて泣いてるのか、分からなくなってしまう。


朝陽さんが買ってきてくれたケーキは、本当に美味しくて、いつの間にか涙は止まっていた。


朝陽さん、ありがとう。









< 124 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop