淡恋さくら
トキヤと同じクラスになって3年目の春が来た。今年も桜が綺麗に咲いている。
私達は高校3年の新学期を迎えた。
高校生活の中で運命的な偶然が重なり、トキヤとは3年間同じクラスになった。クラスだけならまだしも、席替えのたびに隣の席になることが多かった。今回もそう。どういう確率だ。
窓際、左隣の席でトキヤは頬杖をつく。教室最後尾。トキヤさえいなければ最高の特等席だったのに。
窓の外には校庭脇に並んだ桜の木が見える。ちょうど今が満開の時期だ。
トキヤの髪が暖かい風に柔らかくなびいた。桜の匂いまでも運ばれてくる気がした。
今日もトキヤはかっこいい。何でも完璧にこなすからモテる。だけど私にとってはいけすかない男子だ。黙ってるだけで大多数の女子の気を引けて心のどこかでは嬉しいはずなのにそういう素振りを微塵も見せない。そこががっついてなくていいよね〜と、モテループに拍車がかかる。
それでもトキヤは澄まし顔。告白されても毎回同じセリフで断る。
「好かれても困る。俺のことなんてさっさと忘れて他の男好きになれば?」
そのバッサリ加減といったら、ない。相手に涙を流させる時間も与えず速攻その場を後にする冷徹さといったらもう……。
相手から好意をもらいっぱなしで自分は何も返さないとか、ズルいーー。せめて優しいセリフでやんわり断ればいいものを、どうして追い討ちをかける言い方しかできないのだろう?
以上の理由で、他の女子みたいに熱視線を送る気にはなれなかった。