淡恋さくら

「お前は他の女と違うな」

 あくびを抑えながらトキヤはささやく。

「だってトキヤに興味ないもん」

「知ってる」

「どうして彼女作らないの? モテるのに」

「忙しい。女といると疲れる。めんどくさい」

「新学期そうそうブレないねー。相変わらず鬼畜」

「友達の恋ばっか応援して自分のこと無頓着なお人好しに言われたくない」

「ひどっ。まあその通りだけどさ……」

「……好きなヤツに振り向かれなきゃ、モテたって無意味だろ」

 そう。この通り、トキヤは俺様。ふんぞり返り系。自分を中心に世界が動くと思ってる。片想いに胸を痛める女子の乙女心を全くわかっていない。まさにゲス。

 トキヤの隣の席になることが多かったせいで、私は今まで何人かの友達に恋の橋渡しを頼まれてきた。

 具体例を挙げると、告白するチャンスを作ったり文化祭や体育祭などで絶好のシチュエーション(自分で言うのもなんだけど)を設定したこともある。彼女達はとても感謝してくれた。しかし誰一人として恋は成就せず。トキヤは誰の告白にも応えなかった。

 こんな人のどこがいいんだろ。長所顔面スペックだけじゃん。トキヤを好きになる女子達を見て思った。

 顔が整っている。ただそれだけで恋愛市場で優位なのは男も同じだ。人生イージーモード。そのうえ文武両道。

 チートを三次元化したようなトキヤは当然のごとくモテた。あまりたくさん話したことはないけど、少しの会話と今までの出来事でだいたいは分かる。トキヤは顔がいいだけの嫌なヤツだ。

 そんなヤツの秘密とあらば、聞かないわけにいかない!
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