その件は結婚してからでもいいでしょうか
「今、先生のお家に居候させてもらってるんです、だから拒否られた後で、一緒の部屋にいられなくて出てきちゃって」
美穂子は言った。
「ひとつ屋根の下? それで拒否されたの? えらく鉄壁な理性を持ってんな、先生は」
小島さんが感心したような声を出す。
「今まで一度も、手を出されたことないの?」
「えっと」
美穂子の脳裏に、先生の『煽るな』という低い声が蘇った。
顔がボンと熱くなる。
「えっと、一度そんなことがあったんですけど、わたしは酔ってたし先生も途中でやめました。だから今回、お願いしたらもしかしたらって思ったんですけど『中途半端なことすんな』って怒鳴られました」
「なるほど」
小島さんが頷く。
「気持ちがないエッチは、虚しくなるから嫌だって」
涙がこみ上げる。
わたしに気持ちがあっても、先生にはない。
「そっかあ」
小島さんが一口カフェオレを飲む。
「それで美穂ちゃんはどうしたい?」
そうたずねた。
「え?」
美穂子は顔を上げる。
「一番いいのは、その先生に抱いてもらうこと。でも先生は好きじゃない子としたくないっていう、お堅い男子なんだよね。普通ならこれで終わりだけど、美穂ちゃんには差し当たっての大きな問題がある」
小島さんが肘をついた。
「漫画、どうする?」