その件は結婚してからでもいいでしょうか
「欲情するとき、女はこうじっとしてらんなくなって、濡れちゃうの」
美穂子の顔がかあっと熱くなってくる。
確かにじっとしてらんないときあった! でもあれって、濡れてるってことなの?
「じゃなきゃ、入んないから」
「はっ、はいんなっ」
美穂子はいっぱいいっぱいだ。小島さんはそんな美穂子を見て、にやにやしている。
「あの剣幕で美穂ちゃんを連れ帰って、何も手をだしてこなかったとしたら、ゲイか、たたないかのどっちか」
そう言われて、美穂子は昨晩の光景が頭をよぎった。
瞳に宿る欲望の光。
「その、ちょっとぐらいは、手を出されたような気も……」
「そうなの?」
「はあ」
「さあ、詳しく話しなさい」
小島さんが身を乗り出してくる。
「『抱くよ』って言われて、ベッドでこう、なんていうか」
「いろいろ触られたのね」
「はあ、まあ」
直接的な表現に、いちいち心臓が止まりそうだ。
「でも途中で、先生に八代さんから電話がかかってきて」
「八代さん?」
小島さんが首をかしげる。「桜先生の前の編集の?」
「あっ、そうじゃなくて」
美穂子は慌てて首を振る。「同性ですけど、別人です」
「ふうん」
小島さんは特に疑ってもいないようだ。美穂子はほっと胸をなでおろす。