その件は結婚してからでもいいでしょうか
男女が絡んでるスケッチにたどり着いた。
美穂子の顔が熱くなったが、目をそらしたいのをこらえて、先生の絵を見続けた。
「おっぱいを大きく描きすぎたって言ってたな。確かに、すごく巨乳」
美穂子は笑った。
男の人の欲望を目の前にしても、笑う余裕ができてきた自分に驚く。
再びペラペラとページをめくっていくと、突然はっと心臓を掴まれた。
ページをめくる手が止まる。美穂子はごくんと唾を飲み込んだ。
「これ、八代さんだ」
美穂子は、見開きいっぱいに描かれた、たくさんの八代さんを凝視した。顔だけじゃない。中には明らかにベッドの中にいるような、そんな描写がある。裸の肩から背中に続く、なめらかな曲線。
美穂子の手が震えだした。
『人を見てると、描きたいって思う人に出会う。何度も何度も繰り返し、昼も夜も、想像して、考えて、自然と描きだす」
美穂子は再びページをめくる。
「あ、これって」
そこには『花と流星』の中島悠馬くんに似たキャラクターが描かれていた。
恋心を秘めながらも、好きな女の子を見つめるときの、その視線。
『それが『恋をする』ってことだ』
先生の言葉が頭に浮かんだ。
先生は、恋をしてるんだ。八代さんに。