その件は結婚してからでもいいでしょうか
第六章

これが三次元の甘さか!


ああ、甘い。
キスが甘い。
漫画に書いてあることは、本当なんだなあ。
唇が触れるたびに、積もっていく愛しさ。

先生の手が、美保子のシャツをたくし上げた。

あ! もしや、これは!

先生のジャケットの袖を、美穂子はぎゅっとつかんだ。

息が上がって、頬が熱くなって。

いよいよ、大人になるんだ……わたし。

がちゃがちゃっ。
キッチンから音がした。

ふたりの動きが止まる。
そして目を見合わせた。

「美穂ちゃん、アシ部屋のドアの鍵……」
先生が口を開いた。

「俺、午前中通った時かけてないんだけど」
「……知りませんでした」

バッとソファから立ち上がった。

「桜先生?」
キッチンから声が聞こえた。

「山井さんです!」
小声で叫んだ。

「とっ、とりあえず、美穂ちゃんは隠れてっ」
「はいっ」

自分の部屋に帰るには、キッチン入り口の前を横切らなくちゃいけないから、もう手遅れだ。
美保子は先生の寝室に駆け込んだ。

そっとドアを閉めてから、耳をつける。
リビングの様子が、わりとはっきりと聞こえた。

「ガタンッ、ガタガタッ」
先生は慌ててるのか、どうやら足をテーブルなんかにぶつけてる。

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